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【偏差値70の甲子園】〜非常識なリアル文武両道球児に密着〜

今日で7月2日。2023年も半年が過ぎました。さてさて、野球ファンが待ちにまった「甲子園」が来月に控えています。各都道府県、各地域では組み合わせが決まり予選から各地域で激闘を繰り広げています。

 近年、”進学校”の快進撃にも目が離せないです。2015年の春の選抜では愛媛・松山東が東京の名門・二松学舎を破りベスト16入り。同年、近畿大会では滋賀・彦根東が王者・大阪桐蔭を破ったり、激戦区福岡で決勝・大濠を東筑高校が破り、甲子園に出場するなど快進撃が止まりません。

そんな進学校について密着した松永多佳倫著「偏差値70の甲子園」を読んだ感想と進学校の生活について話していきます。

感想

最初に読んだ感想からお伝えするとこの本で紹介されている、6校の偏差値70の進学校は高校生活の限られた時間の中で嫌でも「自律」して文武両道に励み、親から「自立」していく「リアル文武両道」を貫く誇り高き球児に密着した物語。

どんな生徒がいてどうして進学校の勉強量と練習に耐えることができるのか?そして、選手たちは練習時間を言い訳にすることは一切なく各地域に立ち塞がる強豪校相手にも堂々とプレーできるそのメンタルは一体どこからきているのかがわかる一冊です。

この本を読んだ後には「球児が東大を目指して頑張っているんだから、自分は球児と比べたら甘い環境でやっているからもっと頑張らないと!」と思い、頑張る原動力になることでしょう。

松山東 (愛媛県)

まず最初の進学校は愛媛県・松山東高校。松山東では、グランドを他の部活と共同で使っている。「野球部だから」という特別扱いは存在しない。グランドはただでさえ狭く、そこを3つ以上の部活が使うため、野球部が使える範囲はたったの1/4球場の広さでいうと内野グランドの広さしかない。

これではノックはおろか、外野に向かってバッティングもできない。平日は内野グランドのみしか使えない環境下であっても選抜に出場している。

環境を言い訳に甲子園に行けないのはもうどの高校もできない。月〜金は内野部分だけでの練習となり、外野ノックは朝練のみとなる。フリーバッティングはバックネットのネットに向かって打つ。打球がどのように描いて飛んでいるのか、どのくらい飛距離が出たのかは分からないが、球拾いの時間が大幅に削減することができる点、ただでさえ、練習時間が短い進学校にはいい点と言える。

 完全下校は19:10。授業は16:30まで。17:00から練習を始めても最大2時間が限界だろう。当時の選手に受験に向けてどのくらい勉強しているのか聞いてみると「帰ってからはヘトヘトなので21:00には寝て、2時に起きて5時までの3時間を勉強の時間に当てています。」脳のゴールデンタイムを最大限に使った効率のいい勉強をしていた。ただ、どの生徒も授業が始まる5時間前に起きて勉強して、朝練をしてから授業に臨むのは並大抵のことではないのは確かだ。

済々黌 (熊本)

明治12年に創立した、県内最古の歴史を誇る進学校。OBには現役で活躍している阪神・大竹耕太郎投手がいる。

練習は最大で4時間。授業が15:50に終わり、16:00に終わってからに限る。選手たちはこの学校に入学するために、中学の受験勉強では一日10時間勉強に励んでいたという。練習メニューは練習終わりに選手たちで考え、朝来てからメンバーに伝えるという「自主性」を重んじるスタイル。別に監督にメニューを伝えることはないようだ。

監督は大会や選手の状況を見て、ここだけは強化したいと思えば、監督側から考案するがそれ以外は全て選手たちに任せている。また、監督は自立させるために、親の送り迎えをさせないようにと保護者に協力をしているとのこと。「高校生にもなり、親離れをしていかないといけない。依存させないようにしている。依存心は必ずプレーに出てしまうから。」と答えた。

 僕の経験でも納得の考えだ。僕の学校は他の学校とは珍しくかなり保護者とチームの距離が近かった。なんでも保護者が手伝うし、試合でも学校のバスを使わず、各自で現地集合なんてこともあったくらいだ。僕の母は反対だったが、甘えられて育っている選手はここ1番という場面でプレーに綻びが出るのは僕の野球人生でも経験済みだ。

彦根東 (滋賀)

学校が彦根城内にあるというかなり珍しい学校。グランドは縦50メートル、横40メートルという、小学校よりも狭いのではと思わんばかりの狭さだ。グランドでは練習試合は愚か、練習もまともにできない。道具倉庫はトラックの倉庫に入れて、移動可能にしている。

 グランドでは守備練習、山でトレーニング、実践形式は球場で、バッティングは学校近くの倉庫を改造した部屋で行うなど、場所によって練習メニューが切り替わるスタイル。選手はメリハリがついていいとのこと。バッティング練習は5箇所。内、3箇所はマシーン。2箇所がピッチャーの球を打つ。進学校だからかとても時間にこだわる。ピッチャーは8分間の2セットを投げて次の投手が投げるといったケースで効率よく投げる。

8分間でおおよそ10人の打者を相手にするため、2セットで7イニングを投げたのと匹敵するくらい投げ込みをしている。冬でも関係なく行うため、ピッチャーは投げ方を忘れることはなく、バッターは一年中、ピッチャーの本気の球を打てるわけだ。

彦根東のOGの方がスポーツ栄養学の先生で補食ではなく『部活食』と呼ばれる先生プロデュースの食事を練習後に食べている。また、食事だけではなく、入学当初から体重、体脂肪率の推移をデータとして管理してくれているみたいだ。彦根東は5月から夏の予選に向けた体づくりを始めている。夏の甲子園にも出場し、勝ち抜くには”スタミナ”が必要だと体感していたようだ。

自習館 (愛知)

公立高校No.2の敷地面積を誇る校舎の広さ、大学のキャンパスと間違えてもおかしくない。明治26年に創立。平成、令和になってまだ甲子園出場はない。授業は7限まであり、16時まで。完全下校は夏は19時。冬は18:30。今回紹介する学校で唯一、東大野球部に入っているのが自習館だ。

1年生から学習の時間に大学、学部について考える時間を設けたり、2年では校内で学校説明会を開くなど、進路指導部が活発な働きを見せている。自習館では毎日の課題の量が多く、やらないと授業についていけないほど。野球部への特別扱いは一切なく赤点を取れば、追試を受けたりすることもあるようだ。

レギュラー選手にどうやって勉強時間を確保しているのかを聞いてみると「帰ってきて30分仮眠を取って、そこから2時間勉強に充てています。」とのことだった。どの学校も工夫して取り組んでいる。

青森 (青森)

グランドが東京ドーム6,5個分もの広大な敷地面積を誇る高校。さらに、青森高校創立100周年記念事業で設立された練習場名付けて”無限ドーム”設備面、敷地の広さは私立にも匹敵するものがあるだろう。平成、令和と甲子園への出場はなし。OBには太宰治や寺山修司がいる。

雪国のため、シーズンの2/3は雪に覆われており、オフシーズンとなる。練習は主に室内となることになる。特徴のある練習をしているわけではないようだ。

 この高校にも東大を目指す野球部がいた。その球児にどのような勉強をしているのか聞いてみると「授業で習ったことは授業の時間で覚えます。土日の練習後に1週間分の予習を終わらせて、1週間の授業を受けるようにしています。」と準備の量が一般人と全く異なっていた。野球でも勉強も”準備”で決まるようだ。それは社会に出ても同じことが言えるだろう。

佐賀西 (佐賀)

ユニホームには『EIJO』と書かれている。

これは佐賀城の別名・『栄城』からきている。練習時間は17:00~19:00のたったの2時間。学校の決まりで19:30までに門から出さないといけないようだ。19:00まで練習をやったとして、残りの時間で片付けを全てできることはなくグランド整備は翌日の昼休みに行なっているようだ。

 佐賀には大手の予備校がないため、その受け皿を学校がしているようだ。進学校の野球部とイメージするともやしのような体が細い球児を思い浮かべるだろうだが、佐賀西は図体がどの進学校よりもでかい。その要因は練習前の補食にあるようだ。

 練習が始まる前に勉強で脳の糖質を使い切ってグランドに入るため集中力は使い果たしている。最初はおにぎり2個を食べて練習に臨んでいたが、次第に弁当を持ってくる選手が現れて次第に部に広まり、継続的に食べ続けたことで体が出来上がっていったとのことだ。

まとめ

いかがだったでしょか?普段、高校野球で取り上げられるのは、各地域の強豪校や、大会注目選手が殆どでしょう。僕は、こういった、進学校に限らず、様々な環境下で高校野球をしている球児にも目を向けてほしいなと思います。

進学校の特徴は『自律』と『自立』の言葉に尽きます。学業でも野球でも妥協せず、自分が目指す学校、場所に向かって自分は何が足りないのかを分析して、足りないとことを補うその姿勢は大人でもできている人はそう多くはありません。

選手を集めることはできず、練習時間や受験など、ただでさえ他の球児よりもハンディキャップが大きい中そのハンディを味方につけて甲子園へ行く学校もある。今ある環境をどのように捉えるか、ハンディと思うかそれを利用してやるのか、それは人それぞれだ。

手は2本あるうち、1本はペンを握り、もう1本はボールを握る。この夏でも進学校の快進撃に期待が高まる。僕も一度は偏差値70の進学校へ足を運んで実際の練習や考えかたを見聞きしたいと感じました。

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