6月5日〜11日にかけて行われた全日本大学野球選手権。今回私が現地:明治神宮球場で観戦を行った決勝戦 明治大学対青山学院大学との試合の結果と観て気づいたことなどをお伝えします。皆さんにとって少しでも新たな気づきがあればと思います。
試合結果・ハイライト
試合のスコアは以下の通りです。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 | |
明治 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
青学 | 2 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | × | 4 |
18年ぶり5回目の優勝を決めた。
明治・村田、藤江、蒔田ー小島
青学・常廣ー渡部
得点シーンハイライト
【青学】1回裏:1アウト1,2塁から4番西川が真ん中のフォークボールをレフト線へタイムリーツーベースヒットで先制点をあげる。尚も、1アウト2,3塁で5番松本のファーストゴロの間に2点目をあげる
【青学】3回裏:相手エラーで2アウト1,3塁で5番松本がアウトコースストレートをライト前に運び、3点目
【青学】4回裏:1アウト1塁で9番中野がアウトコースストレートをライト線タイムリーツーベースヒットで4点目をあげる
試合は青学打線が明治エース村田を捉え、初回から得点するなど勢いをつけた青学が試合の主導権を握り試合を展開していった。
常廣投手はコースを広く使い相手打線を9回を投げ、被安打7、10奪三振、四死球2、126球を投げ完封勝利で18年ぶり5度目の優勝へ導いた。
優勝インタビューでは青学の安藤監督は
「東都大学、他大学の思いを背負って選手たちが積極的にプレーしてくれた。青学の中で色々あり、今の4年生が1年生の時から監督を依頼されて、1部昇格から日本一まで、本当によく選手たちがよくやってくれた。選手に感謝です。」
涙ながらにインタビューに応えた。
試合詳細情報
攻撃
この試合の結果は明治が青学の常廣投手から得点を奪えない。一方、青学は立ち上がりの村田投手を攻め立て、中盤に入るまでに4点を挙げた。結果は4-0の明治の完封負けに終わりましたが、ヒットの数はほとんど差はありません。
明治:7本 青学:8本
この数字だけをみると、「なんでヒットの数は変わらないのに明治は得点できなかったのだろう?」と疑問に思う方もいるでしょう。結論を話すと、明治は先頭打者が出なかった、見逃し三振が目立ったところが無得点に終わった原因だと思います。明治は9イニングのうち、先頭打者が出たのはたったの1回だけ。
さらに、明治打線は7回終わってわずか3安打完璧に抑え込まれた展開でした。8回にようやく先頭が出塁しましたがその回限りの先頭打者でした。この状況がどのくらい厳しい状況だったのかをデータを交えてお伝えしたいと思います。
「野球は2アウトから」とよく言いますが本当にそうでしょうか?野球の数理的な分析を行う「サイバーメトリクス」の得点期待値というデータを元にお伝えしていきます。得点期待値とは場面が持っている得点の可能性です。データによると2アウト満塁よリも0アウト1塁の方が期待値は大きいことがわかっています。さらに0アウト1塁は1アウト2塁の得点期待値も上回っています。
0アウトの場合
状況 | 得点期待値 |
なし | 0.441 |
1塁 | 0.793 |
2塁 | 1.057 |
3塁 | 1.279 |
1、2塁 | 1.394 |
1、3塁 | 1.682 |
2、3塁 | 1.802 |
満塁 | 2.079 |
1アウトの場合
状況 | 得点期待値 |
なし | 0.237 |
1塁 | 0.480 |
2塁 | 0.660 |
3塁 | 0.913 |
1、2塁 | 0.886 |
1、3塁 | 1.153 |
2、3塁 | 1.318 |
満塁 | 1.492 |
2アウトの場合
状況 | 得点期待値 |
なし | 0.089 |
1塁 | 0.203 |
2塁 | 0.306 |
3塁 | 0.348 |
1、2塁 | 0.415 |
1、3塁 | 0.470 |
2、3塁 | 0.528 |
満塁 | 0.716 |
上の統計データの数字を見てみると0アウトにランナーを出す、先頭打者が出塁することは得点を上げていく上でとても重要になってくるのです。この試合、明治が先頭打者が出塁できたのはたったの一回。これでは、ヒットの数がいくらあっても得点に結びつかないことがお分かりになると思います。
一方、青学打線は4回の間で4点を挙げていて、ヒットの数はわずか8本しかし、得点を挙げた3イニングの間でヒットは6本出ています。少ないチャンスをモノにした証拠だと思います。そして、この得点が相手が乗る前の序盤に得点を重ねたのはとても大きかったと思います。
仮に終盤まで無得点、終盤にかけて4点が入るのでは相手に与えるプレッシャーやピッチャーの気持ちも全く違ってきます。先発投手にとって序盤に先取点を取ってくれるだけでリラックスして投げることができ、思い切って腕を振ることができます。
自分本来のピッチングをすることができます。決勝戦のマウンドというものあり、常廣投手は力むことなく自分のピッチングをすることができたのではと思います。これまで明治打線は今大会1試合平均6得点を挙げていましたがやはり、先取点を先に取られて相手ペースで試合を展開されるとどんなに好調な打線でも、挽回が難しいと思いました。
投手・守備
この試合の先発の明治:村田投手、青学:常廣投手は今大会注目投手で今年のドラフト注目投手でもあります。常廣投手は今年ドラフト1位の呼び声高い投手でもあります。
村田賢一投手
村田投手は春日部共栄高校出身。身長181cm体重90kgとプロにも劣らない体格から最速148キロのストレートを投げます。ストレート系の変化球をコーナーに投げ、打たせて取るピッチングが持ち味でパワー系と思われがちですが7色の変化球を操り技巧派投手です。
しかし、この日は高く浮いた球を痛打、味方のエラーも重なり4失点と悔しい結果に終わった。村田投手は春季リーグ戦で十分実力を証明している。高い制球力でインコースにしっかり投げ込み、そこから球を自由自在に操り、技術は高いポテンシャルを感じる投手です。間違いなくドラフトには上位指名が期待できる選手です。
常廣羽也斗投手
常廣投手は大分県大分舞鶴高校出身の投手高校3年間で球速を14キロ増の最速142キロを更新すると、大学ではさらに11キロ増となる最速153キロをマークし、目覚ましい成長を遂げてきた投手です。
力感のないフォームからテンポよく投げてくるのが印象に残りました。持ち味である、「フォーク」は130キロ台でシンカー系に落ちるボールで低めに決まるとなかなか打つのは難しいなという印象を受けました。
この試合でもコースを投げ分け、得意のフォークボールをバットに当てさせないといった圧巻のピッチングを披露してくれました。決勝戦で素晴らしいピッチングを披露した常廣投手ですが大学3年の秋までは全く無名の投手だったのです。
青学に進学する時も実績が足りず、自ら問い合わせて志願し指定校推薦で入学。入学当時から周りのレベルの差に圧倒されるも「プロ」への道筋をたて、スカウトの目に止まるにはと毎日試行錯誤の日々だった。怪我も乗り越え今季は開幕戦の日本大学戦を完投。決勝の大舞台でもその実力は見事発揮されたピッチングでした。
まとめ
全日本大学野球選手権大会・決勝戦いかがだったでしょうか?高校野球やプロ野球の情報は毎日のように入ってきますが、大学野球はなかなか認知されていない野球ファンも多いのではないでしょうか?
僕自身もっと大学野球の試合が観客席が満員になるくらいの規模に発展していってほしいです。もちろんこれからも大学野球の素晴らしさをもっと野球ファン、野球児に発信していきます。大学野球は高校野球以上にプロレベルに近いレベルの野球です。
高度な野球の上に競合が多く、今の時代は昔のように東京の私立大学が一強になることはなく、どの大学にもプロから注目される選手がいる、そんな世界です。今大会最優秀投手に輝いた、常廣投手も高校までは無名から這い上がってきた選手の1人。今ではドラフト候補の投手にまで成長した投手。秋の大会、そして、神宮大会とまだまだ大学野球も始まったばかりです。これからも大学野球の動向と注目選手の活躍には目が離せないです!ご覧いただきありがとうございました。
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