現在、夏の甲子園甲子園大会の地方大会が各都道府県で連日激戦が繰り広げられています。
そんな高校野球には選手が替わっても、毎年甲子園にくるいわば常連校が存在します。
また、監督が代わり、チームの方針や指導が変わり、短期間の間でチームを甲子園に導く名将と呼ばれる高校野球の指導者がいます。
彼らはどのような指導を部員にしているのか、どのようなことに重荷を置いているのか。
甲子園に導く指導者は信念を持って真剣に生徒たちと向き合っていました。野球だけに限らず、経営者などにもタメになる一生使える言葉ばかりです。
西谷浩一 大阪桐蔭高校
野球に限らず、どんなことも最後は「人」に行き着く。磨かれた人が集まる事で不思議な力を発揮される。
2008年以降、甲子園優勝回数4回を超え、今や高校野球界の大横綱となった大阪桐蔭。
野球の技術だけではなく、寮生活を通じて「人作り」にも力を入れる方針を貫く背景には、同じく「人作り」を掲げる西谷監督の母校・報徳学園の影響が大きいです。
磨かれた人間が集まる報徳学園は、理屈では説明しきれない大逆転劇を甲子園で何度も演じて”逆転の報徳”と呼ばれた。
そのイズムは西谷監督を通して大阪桐蔭にも引き継がれ絶対的な勝負強さを発揮していると言えるだろう。
結局、最後は何事も「人」に行き着くというわけだ。
人間力と言いますが、そこが上がってこないと野球も継続的な結果は出せないと思います。
西谷監督は「人間力の上昇」を1番に置いて指導を行なっていました。レギュラーを重宝する監督が少なくない中、ベンチに入れない選手への指導にも時間をかける。
生徒に対して要求するのは「相手を思いやる心」。
全員が相手を思いやればチームには一体となり、また人間的な成長にも繋がる。
選手としてではなく、人間として成長するべき。それが『補欠選手』だった名監督からの教えであるのだ。
佐々木順一朗 学法石川高校
本気になれば世界が変わる。
2001年春の選抜で、東北勢として初めて決勝進出へと導いた元仙台育英野球部監督・佐々木順一朗。
モットーは「本気になれば世界が変わる」東北は冬場は雪に覆われることの多い。
しかし、勝負の世界では冬にグランドが雪に覆われることを言い訳にはできない。「東北勢は弱い」というイメージを払拭して2014年秋には明治神宮大会で2度目の優勝を飾っています。
さらに昨年2022年104回大会では東北勢初の全国制覇、2023年には次々と強豪校を撃破し準優勝に輝きました。
なかなか結果が出ない時は、自分が果たして「本気」になれているか自問自答してみよう。自分自身の取り組む態度、執念、目つき、表情、使う言葉など自分自身が変わるということ。さぁ、世界を変えて見せよう!
高嶋仁 元智弁和歌山高校
苦しい思いをした人間だけが逆境をチャンスに変えることができる。
智弁和歌山は夏の和歌山大会ではあえて練習量を落とさず、追い込んだ練習を続ける。
疲れを残しながら必死で勝ち進み、甲子園出場を決める頃には、調子がピークになっている。
全国制覇を狙うチームならではの調整法だが、実際に数多くの逆境をチャンスに変え栄冠を手にしてきた。
歴代最多となる甲子園通算63勝を挙げている高嶋さん自身も「お遍路さん」となり四国八十八か所巡りをするなど、求道者として知られる。
今、苦しい境遇にある人ほど、その苦しさを前向きに捉えてほしい。
あの涙を見て、やれると思うたんです。
選手が一番伸びるのは悔しさを味わったとき、これは間違いない
甲子園通算68勝を挙げた最多勝監督・高嶋仁。
智弁学園を辞めて智弁和歌山へ就任した初日。
グランドで部員を待っていたが、やってきたのは1年生2人。「鬼監督」との評判を逃げ出してしまった。
その後、練習試合で30点以上を取られたが、この時に高嶋監督は手応えを感じたのだ。
同じ高校生相手にボロ負けだったが、それは高嶋が望んだもの。
試合終了後、選手たちは涙を流していた。
その涙を見て「チームとしてこれ以上にないくらいに悔しさを味わった」と語る。
悔しさとは成長の裏返しであり、その先には成功が待っている。悔しさが大きいほど喜びも深くなるだろう。
好きなことを精一杯頑張れない人間が、嫌いなことや辛いことに頑張るとは到底思えない。
好きなことを頑張るのは、みんなが当たり前にやっていること。
好きなことだけやって、やった気になっているようじゃ、まだまだ。
より上を目指すためには、辛いことや嫌なことを乗り越えていかなくてはならない。
試練にあったときにその人の真価が試される。辛いことに向かっていける人なのか、それとも逃げ出してしまう人なのか。
辛くて、挫けそうになったときには自分が何のために辛い思いをしているかを考える。
野球が好きだから頑張っている。そこにブレさえなければ、また明日からキツい練習をこなそう。
好きなことを頑張れる人間は、辛いこともきっと頑張れる。「好きだから」それだけでひとは頑張れるのだ。
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佐々木洋 花巻東高校
人生は何に時間を費やし、何にお金を投資し、誰に出会い、本を読むかで決まる。
花巻東高校野球部OBは菊池雄星、大谷翔平を輩出し、花巻東を強豪へと押し上げた佐々木監督。
意外にも大学時代の自分を「クラゲ人間だった」と振り返る。
何をするにも背骨のような芯がなく、ふにゃふにゃ。
そんな佐々木監督を変えた習慣が「読書」だった。
一流経営者の本などを読みあさった佐々木監督は、「成功する人には共通点がある」ということに気づいた。
その人生哲学は教え子たちにも受け継がれた。
人を知り、本を読む。それだけでも野球も強くなる。
佐々木監督の元から輩出されたメジャーリーガーたちの名言集や本も紹介しています。興味のある方は合わせてご覧ください。
小倉全由 元日本大学大三高校
みんな、咲いた花を見るのは好きだけど、咲くまでの過程には興味はない。花が咲くには、強い根があってこそ。
甲子園優勝2回を誇る日大三高の闘将・小倉全由。
小倉監督の趣味の一つに胡蝶蘭を育てることがある。
美しい花を咲かせるためには、まず強い根を作ることが大事。
その考え方は、高校野球にも通じると説いている。
日大三高の毎年恒例の冬合宿は、朝5時半から夜10時まで練習漬けという壮絶な期間がある。
日本一という煌びやかな「花」の地中には、どこよりも追い込んだ練習で培ってきた「根」がある。
たとえ今はキツく苦しい時期でも脇目を振らず愚直に向き合いましょう。
野々村直通 元開星高校
お前たちがどんなに「勝ちたい」と思っても、俺の想いを越えることはできない。
これは俺の一番の自慢だ。悔しかったら俺の想いを越えてみろ!
いかつい風貌と奇抜なファッションから”やくざ監督”とも呼ばれた野々村監督。
その勝利への執念は凄まじく、試合に対して常に「命懸け」で臨んでいたという。
指揮官自らが誰よりも勝ちにこだわる姿勢が、選手たちの闘争心を引き出してきた。
開星は山陰・島根から全国屈指の強豪校と渡り合うだけの力をつけた。
野球のルールブックにはまず、「勝利を目指す」と書かれている。
勝ちにこだわってこそ初めて、野球というスポーツの真髄がわかる。
自分のためよりも誰かのためにと戦った方が人は力を発揮できる
人は、自分のために頑張るより、誰かのために頑張る方が力を発揮できる。
自分が投げるその一球が、誰かを笑顔にする。その一振りが、誰かを勇気づける。
プレーの一つ一つがつながって誰かの力になる。そう思った瞬間、一球に気持ちがこもる。
一振りに気合が宿る。思いを込めた力はやがて、自分に返ってくる。
中村順司 元PL学園高校
野球の試合の中には、人生のすべての要素が詰まっている。
PL学園を1980年から18年間にわたって率いた中村順司元監督。
春夏の甲子園優勝6回、歴代2位の通算58勝を挙げ、桑田真澄、清原和博の「KKコンビ」をはじめ立浪和義、野村弘樹、宮本慎也ら数多くの名選手を育てた。
そんな名称の座右の銘は「球道即人道」その野球の道は、そのまま人の道を通じると説く。その薫陶を受けた教え子の多くが野球人生で花を咲かせ、引退した後の人生でも社会に大きく貢献している。
後藤富 瀬戸内海高校
指導者は自分の言葉で叱るべし
元東映フライヤーずの選手で引退後に瀬戸内高校を2度甲子園に導いた後藤監督。
部員を叱る際に「絶対にしてはならない」12箇条の禁止事項を肝に銘じていた。その禁止事項は以下のとおりだ
- Aをみろ。それに比べて、お前はなんだ。
- オレの若い頃は
- だから言ったじゃないか
- 聞いた話だが、お前は・・・・・・だそうだね
- ・・・・・・と親が言っていたぞ
- ついでに言えば
- オレが困る
- ハッキリ言ってお前は必要ない
- お前は、どうして、そんなにもの覚えが悪いんだ
- それが監督に対して言う言葉か
- そんな態度ではユニホームを着させないぞ
- お前のような人間をオレは嫌いだ
部員のプライドを傷つけぬように気を遣い、自分の言葉で叱るべき、と後藤監督は語る。すると言葉には愛がこもり、野球少年の心に響くのである。
渡辺元智 元横浜高校
目標がその日その日を支配する
全国にその名を轟かせる神奈川県の強豪・横浜高校。
そこで40年以上にわたって野球部の監督を務めた渡辺終身名誉監督もまた、全国に名の知られた存在だ。
数多くの卒業生をプロに送り出してきた渡辺監督が座右の銘とするのは「目標がその日その日を支配する」という言葉。
目標によって行動は変わる。覚悟も変わる。
目標を持たない行動は、無駄に終わることも多い。
この言葉は横浜高校創立者・黒土四郎氏の言葉だというが松坂大輔など、プロの第一線で活躍する同校のOBの選手たちを育てた名言でもある。
目標がないただの行動は「頑張っている気になっているだけ」理想を持って目指しましょう。
我喜屋優 興南高校
日常の生活に関する簡単なルールさえ覚えられない者に、野球のルールを覚えられるはずがない。
そして、世の中のルールを覚えられるはずがない
沖縄・興南高校を甲子園春夏連覇に導いた名将・我喜屋優。
母校の指揮を執ることになって真っ先に行ったのは野球ではなく、生活態度でした。
野球をするための基本は、キャッチボールでもバッティングでもない。ルールを覚え、守ること。
特に野球は複雑なルールのあるスポーツだ。
だからこそ、普段からルールを守る。一見野球とは関係のないことでも「ルールを守る」ことは全ての基本になる。
逆境から逃げてばっかりいると、いつまでも追ってくる。だから『早く慣れちゃえ』と。『慣れちゃったら自分の宝物になるよ、友になるよ、財になるよ』と言うんです。
逆境にぶつかるのは辛いことだ。誰だって逃げたくなる。
乗り越えらるのは、簡単なことじゃない。途中で心が折れそうになる。
それなら、無理に乗り越えようとせずに、付き合っていけばいい。
逆境を嫌えば、また追いかけてくる。それなら少しの間、逆境と付き合ってみたらどうだろう。
この程度のことか。そう思えた時が、乗り越えられた瞬間、その時、自分をじっくり観察してみよう。きっと前より強くなっている。成長している。
今レギュラーになれなくてもいい。
5年後、10年後のレギュラーを目指せ。
野球のスコアボードは9回までだが人生のスコアボードは永遠に続く
レギュラーになれなかった。
ベンチにも入れなかった。
でも、それは現時点で野球の実力がちょっと足りないだけ。
悔しいけれど、悲観するにはまだ早い。中学校まで控えでもプロになった選手はいる。
メジャーリーグでも活躍した、黒田博樹、上原浩治は高校時代は控えだった。
もちろん、先にある舞台は野球だけに限らない。
仕事にも家庭にもレギュラーは必要だ。
5年後か、10年後か、それとももっと先か。いつ花が咲くかはわからない。
人よりちょっと早いか、ちょっと遅いか。たったそれだけのこと。
焦らず、ゆっくりでいい。人生のレギュラーを目指そう。
我喜屋監督について興味のある方は著者・我喜屋優さんの逆境を生き抜く力を合わせてご覧ください。
馬淵史郎 明徳義塾高校
負けても仕方がないと、いい加減な勝負をしても教育にはなりません。
一生懸命勝とうとすることが尊い。
松井の「5打席連続敬遠」のもう1人の当事者、明徳義塾。
試合後、宿舎には脅迫電話までかかってきたという。また、当時から指揮を執っていた馬淵監督は一夜にして悪の権化にされた。
この敬遠が野球を超えた議論になった時、論点の一つに「行き過ぎた勝利至上主義」「勝てばいいというのは教育ではない」というものがあった。
「正々堂々と戦って負ける」ことこそ正義だというのだ。
その論理に馬淵監督は上の言葉で返した。全力で勝とうとした結果の采配。
負けてもいいと思って臨むことがいいことなのか。
両者の選択を第三者が非難するのは難しい。
どちらも全力を尽くした。その結果だ。野球に対する考え方は千差万別。一人一人違っていい。手を抜かず、決められたルールの中で自分の戦い方をする。それこそが尊い。
山下智茂 元星稜高校
心が変われば行動が変わる。
行動が変われば習慣が変わる。
習慣が変われば人格が変わる。
人格が変われば運命が変わる。
松井秀喜をはじめ、多くのプロ野球選手を育てた山下智茂名誉監督。
野球だけではなく、人間教育を重視した教師としても知られている。
その山下監督が当時高校生だった松井秀喜に教えたのが上の言葉だ。
要するに全てのことはつながっているということだ。
いい心がけは、いい結果を生む。ちょっとした変化は、自分を大きく変える。
何かを変えたいなら、まずは心から変えよう。きっと自分のプラスになる。
大井道夫 元日本文理高校
単なる野球バカをつくるなら、野球やめた方がいい。
高校生活の3年間、野球に打ち込むのは素晴らしいことだ。
でもそれが野球”だけ”ではいけない。
無名だった日本文理を新潟屈指の強豪に育て、2009年には夏の甲子園で準優勝まで果たした大井道夫元監督。
普段から選手たちに「野球選手である前に高校生である」ということを説いている。
強豪校ともなると、勉強もせずに野球だけやればいいという風潮の学校も少なくない。
しかし、それでは社会では通用しない。
ほとんどの部員にとって、野球は人生の一段階だ。
野球を辞めたいとき何も残らない人生では寂しすぎる。
どうせなら、野球で培ったものを活かす準備をしておこう。
その心がけがあるかないかで、高校野球を引退してからの約半年の高校生活、そして、半世紀以上に続く人生は大いに変わるのだ。
高校野球をしたことでこれだけ社会に貢献できるのだ!と周りを証明してやろう。
古賀豪紀 元九州文化学園
勝負を分けるのは技術7割声3割。ここというときにどれだけいい声を出せるか
九州文化学園野球部を指導してきた古賀監督は、元プロ野球選手。
家庭環境に恵まれなかった少年時代の壮絶な苦労を経てプロ入りをしたが、活躍できず、引退後に猛勉強の末、教員となった波乱万丈の人生を歩んできた。
その古賀監督が重視しているのが”声”だ。
声を出すことで、リズムが良くなる。気持ちが乗ってくる。元気が出る。
応援でテンションが上がる。大声は無駄な力みも抜ける。
励ます声、活を入れる声、ドンマイ!の声。声はきっと味方になる。
僕自身、ポジションがキャッチャーをしていたこともあり、この言葉は現役時代とても心に残りました。プレーの技術ではなくいかにグランドの監督であるキャッチャーがいい声、いい指示を出すことができるかがそれが僕がキャッチャーとしている価値だと思っていました。常にマスクを外して、全員に顔を見せ声をかけていこう。
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