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【高校野球関東大会】決勝戦!木更津総合対健大高崎観戦レポート

現在5月20日〜28日にかけて行われている第75回 春季関東地区高等学校野球大会決勝戦横浜スタジアムで行われた千葉県代表木更津総合高校対群馬県代表健大高崎高校の試合を現地で観戦していきました。『走・攻・守』において気づきと夏に向けて今後の展望について話していきます。

試合結果

123456789HE
木更津総合000050101751
健大高崎20050021X10161
木更津総合
千葉、井上、金澤 -羽根
健大高崎
石垣、松本、多田、加藤-箱山
本塁打 森田 (健大高崎)

健大高崎は序盤から打線が繋がり、先制点を挙げると先発1年生投手石垣は3回までランナーを出さないピッチングでリズムを作り打線もそれに応え追加点を挙げ一気に5得点。その後、自らの四死球でピンチを招き、一挙5点を失う。その後は木更津総合も流れを掴み逆転を試みるも勝ち越しはならず、健大高崎が4人の投手リレーで逃げ切り春の関東大会優勝を飾った。

得点シーンハイライト

1回裏 1アウト2,3塁4番:箱山 1B2Sから5球目レフト前2点タイムリーヒット

4回裏 ランナー2塁7番:堀江 2Bから3球目インコースストレートを右中間へタイムリーヒット

1アウト2塁9番:團之原 初球真ん中スライダーを左中間フェンスダイレクトのツーベースヒット

1アウト2塁1番:半田 2B2から5球目真ん中スライダーを捉え左中間を破るツーベースヒット

2アウト2塁3番:森田 初球真ん中高めのストレートを振り抜きレフト越えへのツーランホームラン

5回表 四死球で2アウト満塁を作り3番:羽根 フルカウントからインコースを見極め押し出しの四球

2アウト満塁4番:水野 2Sから4アウトコーススライダーをライト前へ運び2点タイムリーヒット

2アウト1,3塁5番:伊藤 2B2Sからアウトコーススライダーをライト線上へ2点タイムリーツーベースヒット

7回表 0アウト2塁4番:水野 1Bからアウトコーススライダーを左中間へタイムリーツーベースヒット

7回裏 0アウト満塁9番:團之原 初球インコースストレートをセンターへ犠牲フライ

2アウト1,3塁2番:狩野 1B2Sからストレートを打ちファーストエラーの間に1点追加。1塁ランナーもホームヘ回るがタッチアウト

8回裏 1アウト2,3塁6番増渕:1Sから2球目をセンターへの犠牲フライ

9回表 2アウト3塁7番:石橋 1B2Sからキャッチャーのパスボールで1点追加

健大高崎は序盤から出塁し、チャンスをつくる場面が多かったです。打線が目立っただけに健大高崎自慢の『機動力』は目立ちませんでしたが、私は今日の試合を観て健大高崎の走塁の意識の高さを感じました。

走塁はスコアブックや電光掲示板に表示されなかったり、数値化しにくいものなので軽視しがちですが、走塁が与える相手守備へのプレッシャーは大きいです。足が速いと思うだけでいつものプレーに焦りが生まれ、送球ミスにつがるケースもあります。

この試合は盗塁は1個でしたが、ランナーの”リード”に注目できました。ランナーのリードには大きく分けて2つの種類があります。『第一リード』『第二リード』です。『第一リード』ピッチャーが投球動作をする前のリードのことをいいます。

 一方、『第二リード』ピッチャーが投球動作に入ってからとるリードのことを言います。第一リードはベースからの距離が離れていればいるほどバッテリーは警戒します。第二リードはバッターが打った打球に対して次の塁へ進むのか、それとも止まるかの判断をします。

健大高崎の第一リードは大きく相手へのプレッシャーを与えていましたが、第二リードの取り方、スタートの判断は抜群でした。今日の試合でランナー1.2塁の場面で木更津総合はバントシフトを敷いている中、バントで前に来ているファースト側に転がしてしまった場面がありました。

1.2塁でホースプレーでアウトになる確率がある中、バッターのミスをランナーがカバーをし、見事セーフでした。2塁ランナーはピッチャーの後ろに位置しているためストライク、ボールの判断ができます。そのため、ストライクゾーンに来たら、大きく第二リードを取り、バットに当たる瞬間にスタートを切ったことでセーフになったのです。

リードだけではなく、ランナー3塁の場面で犠牲フライの場面では外野が捕る前にスタートすることなく、タイミングよくスタートを切り全て生還ました。観ていて当たり前のように見えるタッチアップでランナーが生還するシーン、長打コースを打ち二塁打になるなどは足の速さだけではなく、タイムロスのない走路を走ること、ベースからベースまでまっすぐ走るなどの技術があります。チーム全員が安定した機動力は打線に関係なく、相手へのプレッシャーや得点につながります。健大高崎が日々の練習でどんな走塁練習をしているのか興味が湧いてきます。

健大高崎は初回先頭打者からヒットで出塁するなど、甘い球を積極的に振るシーンが多かったです。健大高崎の打者は全員、バッターボックスの1番後ろ、かつ、ライン上に立っていました。この意図は大きく2つあります。

1つ目はバッターボックスの1番後ろに立つことでボールを長く見ることができ、ボールが失速したところを狙える点です。ボールを長く見ることができる分、ボールの見極めができます。プロ野球選手のバッターを見てもどの打者も1番後ろに立っているのはそういった意図があります

2つ目はライン上に立つことでピッチャーがインコースが投げにくく、アウトコースが近くなる点です。バッターがライン上に立つことで身体がベースに覆い被さるようになり、インコースにキャッチャーが構えるとミットがバッターと被ってしまい、投げにくさを感じることがあります。その結果、真ん中に入り甘い球が多くなることもあります。

しかし、インコース封じにはもちろんリスクはあります。インコースにきちんと投げなられたら打つのが難しいところです。健大高崎のバッターはインコースのボールはファールにして、甘く入ったボールやアウトコースにきたボールを捉えていました。今試合、ヒット16本10得点と打線が爆発したのはただ打つだけではなく、「バント」も多く相手のミスを誘ったり、確実に得点圏にランナーを置いてチャンスを作るなど緻密なプレーがあってこその安打数、得点です。

また、全イニングで出塁をしており、三者凡退がなかったのも大きかったでしょう。木更津総合は先発の石垣投手の前に4回までノーヒットと完全に封じ込められた展開でした。追い込まれてから変化球を内野ゴロ、ストレートに差し込まれて外野フライが多く見受けられました。

 ストレートは140キロを超えており、球威のある高めをフライにするのは速球派の投手には禁物です。高めのストレートに手を出さない、低めの変化球には手を出さないなど、チームでの徹底が大事になります。今日の試合を観ているとなかなか的を絞りきれずに捉えた打球が序盤は少なかったです。

5階には四死球からノーヒットでチャンスを作り、

大事な場面でクリーンアップにタイムリーが出たのはさすがでした。一発勝負の世界では必ずしもヒットで塁に出なくてもどんな形でもいいから塁に出ることはとても重要です。木更津総合はヒット5本で7得点を挙げているように相手が招いたピンチをチャンスにできるかはとてもだいじになることがとてもわかる試合でした。

守備に関しては両校ともにいいプレー、改善できるプレーがたくさんありました。健大高崎は先発の石垣投手が序盤完璧に相手打線を封じこめ理想のピッチングができていたように思えます。初回に2点の援護があったのは彼にとってとても大きかったと思います。力みが抜け腕がよく振れていました。

ただ、この試合1番気になったのは”四死球の数”です。健大高崎はこの試合の四死球の数は合計10個です。状況によっては四球を選択しなければいけない試合展開もありますが、今日は7点のリードがあった上での四死球です。相手打線からしたらこんなチャンスはないでしょう。

自らピンチを招き浮いた球を痛打されていました。1巡目にノーヒットで抑えていただけあってかなり勿体無い四死球でした。この四死球がなかったら、5回に大量得点されることはなかったでしょう。ただ、今日のように高校野球だとイニングごとに調子が変わることもあり得ます。

それに備えて控えはどう準備をするのか。健大高崎はいい勉強になったのではないでしょうか?打者ごとに内野、外野の守備位置が変わっていたことも大変素晴らしいかったです。相手チームのデータをよく分析して、万全の準備をして望んでいることがプレーを観て伝わってきました。ファールの行方からキャッチャーからポジションの指示をしておりとてもいい動きだと思いました。キャッチャーは監督の分身であり、グランドで唯一グランドに正対しているポジションです。あれだけ迷いなく指示できるのは頼もしいです。

一方、木更津総合は序盤から捉えられ、相手打線と相性が悪かったように思います。ストライクをとりにいった球を狙われているシーンが多かったです。ただ、今日のように序盤から捉えられても夏の大会では相手の打線の方が上でも勝負をしなければなりません。

今日の決勝戦のように準決勝でエースが完投し、決勝戦は控え投手で投げないといけないケースは夏の大会でも十分に考えられます。ピッチャーに求められるのはマウンドでどれだけ自分の球に自信を持っているかです。

今日のように甘く入った変化球は禁物です。丁寧に低めに投げることができればもっといいピッチングはできます。やはり、試合に勝つとなると今日のように2桁得点を許してしまうとかなり厳しいです。

5点以内に抑えることができれば勝算の余地は十分に考えることができます。ただどんなに準備をしても、いい球でも打たれることはあります。そうなったら、もうダメなのか?私はそう思いません。

野球は『間』のスポーツであり、『団体競技』のスポーツです。1球ごとに間があり、お互い考える時間を設けられています。私が現役の頃は、ピッチャーに長くボールを持たせるジェスチャーを送ったり、球種のサインだけでなく、『首振り』のサインを作り意図的に首を振らせてバッターをありとあらゆる方法でタイミングをずらしていました

どんなに速い球を投げる投手でもバッティングセンターのマシーンのようにずっと同じタイミングで投げていては打たれて当然です。また、野手は9人もいます。必ず三振を取らなくても一球で打ち取ることができたそのほうがいいと考えます。

 今日の試合では内野の悪送球やバント処理でワンステップ多くセーフにしたりなどミスが目立ちました。初回もヒットを打たれ、次の打者をセカンドゴロに抑えたものの、送球ミスで取れるアウトを逃してしまいました。準決勝では相手を0点で抑えているので、投手力、守備力はあります。いかに大舞台でも普段通りのプレーができるかというのは『負けたら終わり』の試合では特に大事になります。

夏に向けて今後の展望

関東大会はいかがだったでしょうか?私はプレーを間近で観て全国でも高いレベルの選手が多いです。全国制覇を狙えるだけの能力を持っています。

ただ、春の大会は勝てば甲子園行きが決まる大会ではありません。秋から春にチームが急成長を見せても春から夏の1ヶ月半の間でチームが劇的に変わることはほとんどありません。

関東地区は夏の開幕は7月8日です。それまでにどれだけプレーの精度を高めていけるか、夏の暑さにバテない体力作りができるか、コンディショニングをどれだけ整えられるかが鍵になります。今から新しい練習方法を取り入れたり、投げ方、打ち方を変えることはどの高校も考えられません。

実践形式のバッティングや守備がメインになります。そんな中、3年生は最後の夏です。春の大会にベンチ入りできなかった3年生もいるでしょう。残りの2ヶ月足らずの時間でどれだけアピールをして行けるか。

3年生の最後の夏の大会に懸ける想いは1、2年生とは一味違います。高校野球で野球人生を終える球児も多いでしょう。だからこそ私は高校野球をして良かったと思える最後の夏にしてほしいです。私自身も最後の夏の大会は今でも覚えています。一生忘れることがない一生の宝物です。3年生には後悔のないよう練習に励み夏の大会では自信を持ってプレーができるように頑張ってほしいと思います。

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