現在5月20日〜28日にかけて行われている第75回 春季関東地区高等学校野球大会の2回戦横須賀スタジアムで行われた茨城代表土浦日大対群馬代表健大高崎の試合を現地で観戦していきました。
『走・攻・守』において気づきと夏に向けて今後の展望について話していきます。
試合結果
結果は以下のとおりです。
チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
土浦 | 0 | 2 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 5 |
健大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 1 | 2X | 6 |
【健】多田、佐藤龍、石垣、加藤
【土】小森、藤本
日差しの強い中、序盤から点の取り合いで最後までどちらが勝ってもおかしくないゲームでした。
得点シーンを簡単に解説していきます。
土浦日大は2回表、1死から6番鈴木。カウント2-2からインコースのカットボールを右中間へ二塁打。7番大井。高めのストレートを右前安打で一、三塁。8番塚原。カウント1−3からストライクを取りに来たストレートを左前適時打で1点を先制。さらに2死後、1番中本。インコースをピッチャー強襲の適時内野安打で1点を加え2-0
土浦日大は5回表、2死三塁から7番大井。カウント2S1Bから140キロのインコース直球を捉えレフト線へ適時二塁打し3点目。さらに8番塚原。インコースに来たスライダーをレフト線へ適時二塁打を放ち4-0
健大高崎は5回裏、安打、四球、外野フライで1死一、三塁。2死後、2番狩野。が左中間へ適時二塁打を放ち2-4。さらに3番森田。ストレートをレフト線へ適時二塁打で3-4とした
健大高崎は9回裏、1死から1番半田が左前安打し二盗成功。2番狩野。二遊間に落ちる適時内野安打を放ち4-4同点。タイブレークへ
土浦日大は10回表、無死一、二塁。6番鈴木。バントの構えからバントシフトの裏をかき、空いたショートのポジションに転がし左前適時打。5-4と勝ち越し
健大高崎は10回裏、5番箱山が右前安打し満塁。6番増渕。スクイズを試みたも、空振り。ランナーは帰還。浮いたチェンジアップに喰らいつき右前適時打。三走生還し同点。二走は三塁に止まったが、右翼手が処理にもたつく間に生還。サヨナラ勝ちを収めた。
試合は中盤まで土浦日大のペースで試合が進んでいましたが、エース小森が中盤にかけて球速がおち、そこを逃さず健大高崎が一気に猛攻が始まりました。
その後は足を絡めた「機動破壊」を発揮。1試合5盗塁を決めチャンスを自ら作りものにした健大高崎。4人の投手リレーの継投策も成功し、終盤にかけて土浦日大の打線を凌いだ試合でした。
走
この試合で健大高崎が逆転に成功したのはチームの特徴でもある「機動破壊野球」が機能したことに私は健大高崎の勝因はあると考えます。この試合での盗塁数は土浦日大0個。健大高崎5個。成功率は100%です。
バッテリーも警戒してはいましたが健大高崎の走力が勝ったと思います。
5個のうちなんと9回に2個決めています。一つ目の盗塁は初球に盗塁を決めています。当たり前のように決めていますがアウトになればチャンスを潰し、負けるという状況でも初球からスタートの切れるチームは全国見渡してもそう多くはないでしょう。
健大高崎の走塁を観察してみるとリードの取り方や幅も状況によってかなり変えていました。
共通として盗塁をするしない以前にベースから離れて準備をするのが早いということです。
一般的にリードはピチャーのセットのタイミングで同時にリードを確保するのが一般的ですが健大高崎はピッチャーがセットをする前にランナーを確認するときにはすでにリード幅を確保しています。
常に自分の主導でスタートするための準備が整っていました。当たり前のようにやっていますが、ピッチャーが投げてキャッチャーがボールを返す。セットに入るこの時間はたったの5秒ほどしかありません。
その時間でベンチとのサインのやり取り、野手のポジションの確認など多くの工程を行なってランナーは塁から離れるのです。これをチーム全員が徹底しているのは強さの根源なのかと思いました。
スライディングに関してもベースの最短で滑っているため、タイムロスがなく、スライディングによる失速がないため審判から見ても同時だとセーフに見ることもあると思います。
スコアブックには盗塁の数だけしか記録されません。ですが、その結果の根底にはどの高校でもできるような当たり前のことを徹底している。世代が交代してもチームの伝統となっているように思います。ピッチャーや打線というのはその世代によってどうしても優劣が付きますが走塁、守備に関しては唯一スランプのない技術だと思います。
その走塁をチームの強みとしている健大高崎は調子に関係なく、コンスタントに自分たちの野球ができているんだと思います。
攻
攻撃に関してはどちらも調子はよく、思い切りバットが振れていました。
ヒットの数は土浦日大12本健大高崎9本。
両校のエースは140キロを超えるストレートがあり、そう簡単に打てるピッチャーではありませんが打線として両校ともに機能していました。
土浦日大は序盤からセンターから逆方向に意識があり1巡目からセンター方向にヒットがよく飛んでいました。
その意識があったからこそ、インコースの厳しいボールに対してレフト線のフェアーゾーンに打球が落ちるんです。全バッターがバッターボックスのライン上に立っていました。中盤まで2番手の佐藤投手までは完全に合っていましたが、3番手の石垣投手に変わってから内野ゴロが多く相手に流れを渡してしまいました。
一方、健大高崎はエース小森の140キロのボールに対して高めのボールに対して、内外野フライが中盤までとても多かったです。土浦日大とは真逆のバッティングをしていました。
速球派のピッチャーに対しての対策は
- 高めのボールに手を出さない
- カウントを取りにくる変化球を打つ
- ストライクを入れにくるストレートを打つ
があげられます。これが中盤までできていたのが土浦日大でした。打者有利のカウントでストライクを入れに来たボールを見逃さず捉えていました。
延長10回タイブレークで0アウト1・2塁から始まり、初球バント失敗からバントシフトを敷いた健大高崎の裏をかき、誰もいない三遊間の空いたところにヒッティングで一点を取ったシーンは相手との駆け引きを制した土浦日大の見事な采配でした。
健大高崎は甘い球を見逃し、ストレートに詰まりフライが上がるのが試合全体を通して多かったです。しかし、中盤になって球速が落ち始めたところを見逃さず捉えた健大高崎打線も素晴らしいかったです。その後は鋭い打球が健大高崎にも出るようになり野手の間を抜く打球、ライナー性の捉えた打球が多くなりました。
ピッチャーが右から左に変わってもそのバッティングは変わらず貫けていました。バッティングだけではなく、バントも多い試合でした。チャンスを確実に作る土浦日大と盗塁でアウトをやらず塁を進める健大高崎。
お互いのチームの特徴が出ていた場面でもありました。10回表勝ち越しに成功した後にバントでランナーを進めることができず、後続も続かず1点止まりに終わったのは健大高崎にとって大きかったです。
守
両校の投手はストレートは140キロを投げていてレベルの高いピッチャーでした。
投手力で土浦日大と健大高崎の違いは投手層の厚さだと思います。土浦日大は右のエース小森と左の藤木の2枚。一方、健大高崎は右左ともに2枚ずつおり、どの投手も140キロを超えるストレートを投げるピッチャーでエースと遜色のないピッチャーが控えにいたこと継投で土浦日大打線を最小失点で抑えた健大高崎の方が一枚上手でした。
投手の課題は土浦日大は「球威」と「制球力」健大高崎は「制球力」です。
土浦日大も中盤まで完全に健大高崎打線を抑えていましたが、序盤からボール先行が続いており打者有利のカウントを自ら作ってしまい痛打されるケースもありました。
5回の2点追加した後の先頭打者に対してフルカウントでレフト前ヒットを打たれたのは試合が変っわたタイミングでした。点が入ったらそれだけ試合は動く状況で特に点が入った次の回の先頭打者はバッテリーとしては必ずアウトにするのがマスト。
そこでヒットを打たれてしまったのは健大高崎の反撃の一打になりました。5回になって小森投手のストレート球速がこの回一度も140キロをマークできなかったのは暑さの影響か球数を放ってきて疲れ出したようにもスタンドから見えました。
代わった藤木投手もなかなか制球が定まらずにストレートの四球が多かったです。まだまだ夏までに潰していく課題はありそうで伸び代が多くありそうです。
健大高崎の投手陣は140キロを投げる投手が4人いるのはかなりチームとして安定した強さが発揮できると思います。
ただ、継投ができるといっても投手を代えるのにはリスクも大きいです。仮にイニングで継投をするとなればどんなに抑えていた投手を代えてまで代えるわけですから相手にとってはラッキーなことにもなりますし、早く交代すると代えの投手がいなくなり最後のピッチャーがどんな状況でも投げないといけないです。
現代複数の投手、継投策は当たり前になってきましたがその分リスクに対するケアも必要です。4人とも素晴らしいボールを投げていましたが欲を言うとストライク先行、四球を出さなかったら防げた失点はあります。背番号1の佐藤投手も2失点しましたが、
その発端は「四球」からです。四球は自ら相手にチャンスを与えているのことと変わりません。ピッチャーの基本はストライク先行で投げることです。ボール先行では変化球を投げれず投げられるボールが限られてきます。
そのため、バッターは的を絞って迷いなくスイングでき、いい結果に結びつきます。
そうならないためにもどんな状況でもストライクをとることが大事ですね。互いの守備力は堅かったです。一つの内野ゴロでもファーストにストライク送球ができていたり、全員がボールに対してカバーリングができていたり、当たり前のことのように見えて強いチームはここが徹底できている印象を受けます。
また、健大高崎は牽制をよく使っていました。4回表2アウト満塁、迎えるバッターは先制点をあげた塚原選手。カウント2-2。大きくリードを取った一塁ランナーを逃さずキャッチャーからの牽制でピンチを凌いだのは印象的でした。試合のなかで牽制はかなりあったので、日頃の練習からやっていることがプレーを見てわかました。
夏に向けて今後の展望
夏の全国大会まで予選までもう2ヶ月を切っています。
これから一気に球速を上げる、打球が飛ぶようになることは殆どありません。これからは課題を克服する。一つ一つのプレーの精度を上げることと「体力作り」です。「負けたら引退」というプレッシャーの中、いつもと同じプレーができるか、夏の暑さにバテることなく、3時間を超える試合を戦い抜けるかが鍵になります。
一発勝負で何が起こるかわからないのが高校野球です。春の大会に勝ったからといって同じ相手に勝てる保証はありません。選手には怪我なく、悔いなくプレーを楽しんでほしいと思います。今年の夏も熱い夏がやってくる予感しかありません。
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